熱田千華子作品集
時事通信社 世界週報 2001年12月18日号
第15回: タイガー・ウッズ
from Ako  to Ako 
Truthfully, I feel very fortunate, and EQUALLY RPOUD, to be both African-American and Asian!
「私はアフリカ系かつアジア系の両方でいられることを心の底から幸運に思い、同じくらい誇らしく思います」


ここしばらく、プロゴルファー、タイガー・ウッズの日本版ウェブサイトを立ち上げる仕事にかかわっていた。タイガーの公式サイトを翻訳し、日本のファンが楽しめるように味付けする仕事だ。日本版の本部は東京、英語版サイトの主要スタッフはオハイオ州クリーブランドと、ここボストンにいる。拠点が各地に広がり、連絡はEメール。インターネット時代にふさわしいプロジェクトだ。

仕事をしていてこんなことを言うのもなんだが、私はゴルフには疎い。打ちっ放しに一度行ったことがあるだけで、コースに出たこともない。それでも、タイガー・ウッズの名前は知っていた。今回、タイガーに関するデータや記事にたくさん触れて実感した。今さら何を、と言われるかもしれないが、すごい人なんですね。

同上のサイトのタイガーに関するプロフィルにはこうある。

Eldrick (Tier) Woods, now 25 years of age, has had an unprecedented career since becoming a professional golfer in the late summer of 1996. He has won 35 tournaments, 28 of those on the PGA TOUR, including the 1997 and 2001 Masters Tournaments, 1999 and 2000 PGA Championships, 2000 U.S. Open Championship, and 2000 British Open Championship. With his second Masters victory in 2001, Tiger became the first ever to hold all four professional major championships at the same time. 「現在25歳のエルドリック(ニックネーム:タイガー)・ウッズは、1996年夏の終わりのデビュー以降、既に無類のキャリアを築いている。デビュー以来通算PGAツアー28勝を含めて35のタイトルを獲得しており、その中には97年と2001年のマスターズ、99年と2000年の全米プロ、2000年全米オープン、2000年全英オープンのタイトルもある。今年2回目のマスターズ勝利で、ゴルフ市場初めてタイガー・ウッズは4大メジャー大会のタイトルを同時に保持する選手となった」

白人プレーヤーが圧倒的に優勢のゴルフ界で、父親がアフリカ系、母親がアジア系(タイ)の彼がこれだけ進出したのは画期的なことだ。プロフィルの続きにはこうある。 Tiger also was the youngest Masters champion ever, at the age of 21 years, three months and 14 days, and was the first major championship winner of African or Asian heritage. 「タイガーが初めてマスターズで優勝した年齢(21歳3ヶ月14日)は史上最年少記録であり、さらに、アフリカ系またはアジア系の選手として初のメジャー大会の優勝となった」

しかし、タイガー自身は、人種のことについて騒がれるのは好まないようだ。同サイトには彼のコメントがあった。

On my father’s side, I am African-American. On my mother’s side, I am Thai. Truthfully, I feel very fortunate, and EQUALLY RPOUD, to be both African-American and Asian! The critical and fundamental point is that ethnic background and/or composition should NOT make a difference. It does NOT make a difference to me. The bottom line is that I am an American /// and proud of it! 「父の側に立つならば私はアフリカ系アメリカ人で、母の側だとタイ系になります。私はアフリカ系かつアジア系の両方でいられることを心の底から幸運に思い、同じくらい誇らしく思います。基本的かつ重要な点は人種的拝啓や素性に何ら影響されるべきではないということです。実際、私にとっては何の影響もありません。一番大切なことは私がアメリカ人であり、それを誇らしく思っているということです」

タイガーのファンがつくるサイトはたくさんある。その1つがロールモデル・ネットというサイト。ロールモデルというのは、他人の手本となる人物という意味で、タイガー・ウッズをはじめ、各界から有名人を何人か選び、経歴を載せている。テレビホストショーの司会者ロージ・オドネル、テニスプレーヤーのモニカ・セレシュ、バスケットボール選手マイケル・ジョーダン、上院議員のヒラリー。クリントン、ファッションデザイナーのラルフ・ローレンや俳優ブラッド・ピットなどで、「何でこの人を手本としなくちゃいけないの」という人も結構多い。

タイガーのページを見る。Tiger thinks that being a good role model to others is even more important than his golf. He thinks his golf is just a vehicle for him to influence people. 「タイガーは、良いロールモデルとなることはゴルフよりも大切だと考えている。ゴルフは人々に良い影響を与えるための単なる手段としてしか考えていない」とかなり断定的に書いてある。続けて、He is truly a multi-racial person, not just a black athlete. People feel that he will be a big influence on people across the world ? and not just in a golf sense. He can hold everything together. He is a universal child ? truly multi-cultural. 「タイガーはマルチ人種であり、単に黒人のアスリートではない。タイガーが世界中に与える影響は、ゴルフにとどまらず大きい。タイガーはすべてを統合できる。彼は全世界的な、真に多文化的な存在なのだ」。タイガー自身がどう思おうと、やはり彼の人種背景は多くの人にとって重要なことのようだ。

私のアパートの大家は60代半ばの弁護士で、いつもタイガー風のキャップをかぶっている。ファンなのかと聞くと、「彼はゴルフのレベルを革命的に引き上げたんだ」と絶賛。しかし、タイガー登場以降のゴルフ人気の過熱には迷惑しているらしく、「ゴルフ場が混んでね。昔はのんきで良かった」とぼやいていた。

(時事通信社 世界週報連載『熱田千華子のあめりかインターネット暮らし』より)