熱田千華子作品集
時事通信社 世界週報 2004年6月29日号
第77回:ペット
 
"I married my pet!"
「私のペットと結婚しました!」


友人のキムが新しいネコを飼い始めた。日本でも同様だろうが、30代以上の独身男女には、結婚とか恋人をつくることに興味を失い、ペットに異様とも思える情熱を注ぐ人が多い。キムも、ハーレーという溺愛しているネコがいるのに、もう一匹飼い始めたそうだ。

サムと名付けられた、生後6カ月の新しいネコは、ボストン郊外のごみ捨て場にいたところを動物愛護組織に拾われたそうだ。ペットの里親募集サイトであるペットファインダー・ドットコムに広告が出ていて、キムのお目にかなったというわけ。

私も早速同サイトへ行ってみた。私自身成人してからペットを飼ったことはない。サイトのトップにはAdopt an Homeless Pet!「ホームレスのペットを養子にしよう!」とある。サイトは、The American Society for the Prevention of Cruelty to Animals「動物への残虐な仕打ちを防止する全米団体」という団体によって運営されている。

養子に取りたいペットを検索できる。まず、動物の種類だが、Barn Yard 「家禽類」、 Bird 「鳥」、Cat 「ネコ」、Dog「犬」、 Horse「馬」、Pig 「豚」、Rabbit 「ウサギ」、Reptile「爬虫類」、Small & Furry「ふわふわした小動物」の中から選ぶ。捨てられた豚や家禽類がいるなんて、と驚いた。次に、各種類の血統、年齢、性別、サイズを選び、自分が住む地域の郵便番号を入力する。

サイトのトップページには同サイトでペットを見つけた人たちの投稿があった。その1つはDauntless Courage 「不屈の勇気」と名付けられたお話。ミシガン州に住むジェニファーさんが同サイトでネコのサーシャを養子に取った。サーシャはたった700グラムしかなく、見るからにあわれだったそうだ。話は続く。

Jennifer adopted her and found that her tiny size doesn't daunt her. Now at 5.5 pounds, she chases two Labrador retriever mixes around the house. "She acts like a dog sometimes than a cat," Jennifer says. She adds that Sasha also likes to cuddle. 「ジェニファーはサーシャを引き取ってみて、体は小さくても物怖じしないことが分かった。今や2.5キロ近くに成長し、家の周辺で2頭のラブラドールリトリーバーの雑種を追い回しているそうだ。『サーシャはネコというより犬のように振る舞うことが多いわね』とジェニファー。でも、サーシャは体をすり寄せてくるのも大好きらしい。とかわいい話が載っている。

獣医お薦めペットグッズショップ

私は子供の頃、インコを何度かかって実に楽しんだ思い出がある。また飼ってみようかしら。Parakeet「インコ」で検索してみると、15羽のインコが引き取られるのを待っていた。その中のPeepsと名付けられたインコの写真を見ると、とても可愛い。紹介文にはこうあった。

Peeps is a male blue parakeet. Peeps is vet checked and healthy, and available for adoption. He is friendly and able to be handled. He will be adopted with his cage and supplies. 「ピープスはオスで青いインコです。獣医の検診を受けていて健康で、養子に行く準備ができています。人なつこく、手乗りにもなります。鳥カゴとその他の物品が付きます」。今は、このインコはボストンのはぐれ鳥養護施設にいるようだった。

ネコや犬はとにかく大変な頭数が養子先を探している。キムにどうやってサムに決めたのかと聞くと、「ハーレーと色が微妙に違う茶色だから」と、新しいブラウスを選ぶようなことを言う。検索してみたのはいいが、面倒でやはりペットを飼う気にはなれない私に比べ、キムの動物に対する愛情の深さには関心する。

別の友人エリックも30代後半の独身男性だが、2匹ネコがいて、ガールフレンドよりもずっとネコに貢いでいる。しょっちゅうネコのためにと買い物をしているが、彼のお気に入りのサイトはドクターズフォスター&スミス・コム。実在する2人の獣医が推薦するペット関連グッズをそろえたサイトだ。

同サイトでは犬、ネコ、熱帯魚、鳥類、爬虫類などのペットのための遊び道具から医薬品までそろっていた。季節柄、夏向けの新商品が並んでいる。これらSummer Toys 「夏のおもちゃ」の中では、犬のためのSporty Floaters 「スポーティーな浮き」の写真が目を引く。Throw these durable neoprene floating toys in the water and just watch your dog go. Each toy is shaped perfectly for throwing longer distances. 「耐久性がある合成ゴム製の浮きおもちゃを水辺で投げて、犬が追うのを楽しみましょう。どのおもちゃも長い距離を投げられるような形になっています」とあり、カラフルなフットボールやリング状の商品の写真が並んでいる。

ペットとの結婚に3タイプ

ペットも子供もいない私は、こういうおもちゃのショッピングにはずっと無縁なのだが、見ているだけでうきうきしてきた。そうエリックに伝えると、「ペット関連でうきうきするならこのサイト」と言ってマリーユアペット・ドットコムというサイトを教えてくれた。サイトの名前通り、Pet and People Wedding Specialists 「ペットと人間の結婚に関するスペシャリスト」とあり、Happiness would never end if you'd only marry your furry friend 「もしあなたのふわふわした友人と結婚さえできれば、幸福は決して終わりません」とある。

同サイトを使ってペットと結婚するには3タイプある。一番簡単で安価(約8ドル)なのは、同サイトに登録して証明書を郵送してもらうこと。35ドル払うと、証明書のほかにI married my pet!「私のペットと結婚しました!」大書きされたTシャツがもらえる。そして200ドル払うと、証明書とTシャツのほかに、名前と結婚記念日を手で刺繍した壁掛けがもらえる。

そして、これらのサービスに実際にカネをかける人がいるのだ。サイトには晴れて結婚した、何組ものカップル(ペットとその飼い主)の写真が掲載されていた。皆、実に幸せそう。ついうらやましくなった。


(時事通信社 世界週報連載『熱田千華子のあめりかインターネット暮らし』より)