熱田千華子作品集
時事通信社 世界週報 2003年7月22日号
第54回:グーグル
 
"Seawch Tips, uh-hah-hah-hah"
「検索ヒント、ワハハハ」


日本でもそうだと思うが、検索エンジンのサイトで抜群に人気があるのはグーグルだ。同サイトで検索ができるほか、他の多くのサイトの検索機能をグーグルが担っている。例えば大手ポータルサイトのヤフーで検索すると、結果が表示されたページの下にSearch Technology provided by Google 「検索技術はグーグルが提供」と出てくる(*)。グーグルなしに、ウェブの検索は成り立たないのだ。

最近出版された「Google Hacks」(グーグルをハッキングする、という意味か)という本を友人が貸してくれた。非常に分厚い。「ただウェブで検索するだけなのになんでこんな本が必要なわけ」と思ったが、内容を見てみると、いかに私がグーグルを使いこなしていなかったのかよく分かった。

グーグルに行くとホームページは英語で表示されているが、検索フィールドの右横にあるPreferences「表示設定」に行き、インターフェース言語を「Japanese」にすると日本語になる。選択できる言語は何と86種類。中には、南アフリカ共和国に住むコーサ族が使うXhosa「コーサ語」や、インド北東部ビハール州で使われているBihari「ビハール語」などが並ぶ。リストに使いたい言語がない時はグーグルに連絡できる。Google believes that fast and accurate searching has universal value. That’s why we are eager to offer our service in all the language scattered upon the face of the earth. 「グーグルは、迅速で正確な検索機能は世界的な価値があると信じます。このため、我々は地球上に散らばったあらゆる言語でサービスを提供したいと強く思っています」とある。素晴らしい。

冗談もいっぱい

もう一度言語リストを見ると「Elmer Fudd」とあった。アメリカのアニメーションに出てくる、頭が悪いキャラクターの名前だ。これを選んで保存すると、グーグルサイトがミススペルだらけになった。Advanced Search 「高度検索」がAcvanced seawch Find results 「検索条件」が、Find wesuwtsSearch Tips 「検索ヒント」がSeawch Tips, uh-hah-hah-hah「検索ヒント、ワハハハ」とある。こういう冗談が楽しいのだ。

私は近く、ニュージャージー州のケープメイという避暑地に遊びに行く。これまでは単に“Cape May”と入力し検索していたが、もっと詳しくできる。サイクリングをしたい上に、有名なビクトリア朝の家を見たいので、“Cape May” に続けてプラス記号を入れ+biking “Victorian houses”と入力。ホテルを予約したので宿泊情報は必要ないため、続けてマイナス記号を入れ - lodgingとも入れた。以前は何千ものページが出てきたが18件に絞られた。トップの検索結果は、ボルティモアの新聞「サン」紙オンライン版のケープメイに関する記事だった。Cape May is one of America’s most genuine tributes to the Victorian era. The town is easily navigable by foot, and many visitors explore the flat, tree-lined streets by bicycle. 「ケープメイはアメリカで最もビクトリア朝期に敬意を表する町です。町は歩いて十分回れますが、多くの訪問客は平らな並木道を自転車で探訪します」で始まる記事を探し当てられた。

休暇のプランも良いが、健康状態は大丈夫だろうか。先日私はUrinary Tract Infectionで苦しんだばかり。病院で診断されたのだが、「Urinary Tract」という言葉がよく分からなかった。家に帰りグーグル検索。そこで、もし私が間違えて「Ulinary Tract」で検索したとしよう。するとグーグルはすぐさま、Did you mean: “Urinary Tract” 「『Urinary Tract』のことですか」と聞いてくる。スペルチェックしてくれるのだ。訂正された言葉をクリックすると、36万5000の関連ページが並ぶ。そのリストの上に、Searched the web for “Urinary Tract” 「『Urinary Tract』でウェブを検索しました」という一文が。この文上で“Urinary Tract”をクリックすると、その意味が表示される。意味はこうあった。definition: the organs and tubes involved in the production and excretion of urine「名詞:尿の生成と排出にかかわる臓器と器官」。「ああ、泌尿器のことかあ」としみじみ分かり、ようやく検索されたページをじっくり見ることができた。

4500のメディアソース

グーグルのホームページには、Web, Images, Groups, Directory, Newsの5つのタブが並ぶ。私はウェブ全体を検索するWebしか使ったことがなかった。Imagesは画像検索で、Directoryはカテゴリー別に情報が検索できる、ポータル系サイトと同じ仕組み。Newsはすごい。世界中の4500のメディアソースから集まったニュースを自動的に分野に区分し更新していく。私がチェックした時点では、ビジネスニュースにあったブルームバーグ社提供のGermany’s Schoeder to Speed Tax Cuts to Spur Growth 「シュレーダー独首相、経済成長を促すため早期現在実現へ」の記事が、10分前に届いた一番新しいニュースだった。

私は病気の再発が心配なので、「Urinary Tract infection」でニュースを検索した。最新ニュースは前日午前、アーカンソー州の地方新聞のオンライン版に載った記事。この地域に住む20歳の男性が9歳の女の子に暴行を加え、この女の子が「Urinary Tract Infection」に感染、治療中という記事だった。痛ましい記事だが、私にはあまり必要ないニュースだ。

Groupsはユーザーの掲示板で、森羅万象についての書き込みがある。関心を体調からバカンスに戻して、「Cape May」今年6月の書き込みを検索すると、964件もあった。膨大な書き込みにうんざりしてきたが、マイクさんという人が残したメッセージ、In Cape May, Two Mile Landing has some great seafood, as does the Lobster Shanty. 「ケープメイではツーマイルランディングというレストランが素晴らしいシーフードを出します。ロブスターシャンティも悪くありません」はしっかりメモした。

友人の本によると、以上はグーグルの使い方のほんの一部のようだ。グーグルの機能を全部マスターするのは大変で、はまってしまうとケープメイへの旅行も忘れてしまいそうだ。

(時事通信社 世界週報連載『熱田千華子のあめりかインターネット暮らし』より)


(*編集注)その後ヤフーは自前の検索エンジンに切り替え、最大のライバルであるグーグルとの対決姿勢をますます強めている。