熱田千華子作品集
時事通信社 世界週報 2003年3月25日号
第46回: ジップカー
 
“You’d walk up to a Zipcar, unlock it with your Zipcard, and go!”
「ジップカーまで歩いて行き、ジップカードでロックを解除して、さあ運転!」


アメリカでは日本のように車庫証明を取ることなく車が持てる。私が住むボストンでは、駐車スペースの場所を探すのは至難の業だ。都市の大きさに比べて車の量が多過ぎるとしか思えない。訪問先や自宅周辺で駐車場所を探して走り回るのは当たり前。先日新聞を読んでいたら、ボストン在住の著名な劇作家がニューヨークに引っ越すという。「駐車状況がひどすぎる」と書いてあったので、驚いた。ニューヨークのほうがましなんて。

自家用車を修理に出していたので、先日久しぶりに公共バスに乗った。社内広告が目に入る。詳しい数字を覚えていないので申し訳ないが、「平均的アメリカ人が年間セックスに使う時間」と「平均的アメリカ人が年間駐車スペースを探すのに使う時間」を比べており、後者の数字のほうがはるかに大きい。その下に「こんな状況を変えてみませんか?」と書いてある。何の広告かと思ってよく見てみると、ジップカーという新しい会社の広告だ。インターネットを利用したカーシェアリングのビジネスである。

同社のサイトへ。Zipcar - wheels when you want them「ジップカー、欲しい時だけ持てる車」とある下に、イラスト付きで左から順番にResearve by Hour 「時間ごとに予約」、Cars Nearby「近くの車へ」、 Unlock「ロック解除」、 Drive!「運転しよう!」と書いてある。

サイトを読むと、仕組みはこうだ。同社所有の車約90台がボストン市内のあちこちの駐車場に置かれている。サービスの会員になると、インターネット上で最短1時間、特定の車の予約ができる。時間になれば、付与された会員カードを持参してその車が置かれている駐車場へ行き、カードでロックを解除。予約した時間分だけ使い、自分で元の駐車場に戻す。使用時間、走行距離に対して課金されるが、ガソリン代は会社側が負担する。ボストン以外に、ニューヨーク、デンバー、ワシントンD.C.でも運営されていて、会員になるとどの都市でも同社のサービスを使えるそうだ。気になるのは料金。


*この続きは書籍『イースト・コースト インターネット暮らし』(新風舎)でお楽しみください。

(時事通信社 世界週報連載『熱田千華子のあめりかインターネット暮らし』より)