熱田千華子作品集
時事通信社 世界週報 2002年10月15日号
第35回: Eセラピー
 
“240 minutes at $240 ($US) plus 30 min. bonus.”
「240米国ドルで240分プラス30分のボーナス」


日本の事情はよく分からないが、カウンセリングやセラピーといった心理療法を受けていると、特別視される場合がまだ多いのではないか。私の周囲にいるアメリカ人の間では、セラピー経験のない方が変人と思われるほど当たり前のことだ。学校や職場に大抵カウンセラーはいるし、開業しているカウンセラーの治療を受けると大抵健康保険がきく。

インターネットでも心の悩みを相談できる。友人のシビルの推薦はヘッドワークス・コムというサイト。ロバート・サンズベリー氏という心理学者が個人で経営、E-therapy「E−セラピー」を受け付けている。

シビルは富裕な家庭に育ち、一流大学、大学院を出て何一つ苦労がないよう見えるのだが、セラピー漬けである。よく夜中に「もう死にたい」と泣きながら私に電話してきたりしていたが、最近はこのサイトのE−セラピーに助けられているよう。深夜私に電話する代わりに、サンズベリー氏にEメールをしたためている。私にはありがたい。

私も、昔アメリカの大学院在籍中、さらに昨年も一時期カウンセラーにかかった。いろいろと悩みがあったのだ。しかし、英語で、知らない人に赤裸々に悩みを打ち明けるしんどさからうまくいかなかった。Eメールによるセラピーだとその心配がないかな。

サイトに行ってみる。サンズベリー氏はメリーランド州で開業25年のキャリアを持つカウンセラーだが、E−セラピーは5年前にスタートしたそうだ。従来のカウンセリングと比較し、E−セラピーの利点を並べる。It works. It’s convenient. It’s fast. It’s cost-effective. It’s private. 「効果があります。便利です。迅速です。値段の割がいいです。プライバシーが守られます」とあった後、It’s accessible. If you have access to email, you have access to e-therapy. Suppose you’re stationed in Antarctica. Your nearest psychotherapist may be 18,000 miles away. An e-therapist is as close as your internet access. 「身近です。Eメールへのアクセスさえあれば、Eセラピーを受けることができます。例えば、南極に駐在しているとしましょう。一番近い精神科医は1万8000マイルの彼方にいます。E−セラピストにはインターネットアクセスさえあれば会えるのです」。この項目には非常に説得力がある。

同サイトによると、サンズベリー氏にメールを送ってから大体1日以内には返答があるそうだ。メールを書く際に明らかにしなければならない点が4つある。


*この続きは書籍『イースト・コースト インターネット暮らし』(新風舎)でお楽しみください。

(時事通信社 世界週報連載『熱田千華子のあめりかインターネット暮らし』より)