熱田千華子作品集
時事通信社 世界週報 2002年10月1日号
第34回: 子育て
 
“This site is produced by women living the same life as you - we juggle babies and dinners and work and sanity.”
「このサイトはあなたと同じ境遇にある女性たち――育児と家事、仕事と精神の健全さを両立させている女性たち――によって作られています」


友人の妹ダイアンのところへ遊びに行った。ニューヨーク市郊外に住む35歳のグラフィックデザイナーの彼女は1カ月前に双子の男の子を出産した。高校教師のダンナさんも相当手伝っているが、夜通しの授乳で疲れ切っていた。「1人持って帰っていいわよ」とまで言う始末。

アメリカの産休は非常に短い。法律で認められているのは約3カ月。ダイアンも1カ月後には職場復帰する。このため、実家の母親が近所にマンションを買い、平日はそこに住んで子供の面倒を見るそうだ。大変である。

産休が短いだけでなく、アメリカには公立保育園なるものが一切ない。赤ちゃんを育てるには過酷な国だと思う。共働きが当たり前のようにメディアで吹聴されているが、現実は厳しい。特に女性にとって、仕事を取るか子育てを取るかというテーマは永遠に続くようだ。

子育てと仕事を両立させたい女性のために、Working Moms Refuge 「働く母親の避難所」という名のサイトがある。2人の幼い子供を育てながら仕事をしていたニューヨーク州に住む女性が、そのストレスをあるサイトの掲示板に綴ったところ、山のように共感のメールが来た。それをきっかけに1994年に始めたサイトだ。設立目的にこうある。 This site is produced by women living the same life as you - we juggle babies and dinners and work and sanity. 「このサイトはあなたと同じ境遇にある女性たち――育児と家事、仕事と精神の健全さを両立させている女性たち――によって作られています」。

サイトには小児科医やベビーシッターの選び方の情報を満載した「ファミリー」、在宅勤務や起業についての「キャリア」のほか、関連新刊紹介やレシピなどが。忙しい母親たちを助けるため、母親たちが起こしたビジネス紹介も。

掲示板には、7歳の双子の男の子と5歳の女の子がいるシェリルという名の女性からこんな悲痛な声が寄せられていた。I work full time. My work does not stop till 4:00. It is the same; come home, cook, laundry etc... My husband helps sometimes but I feel that I yell so much and have no control. 「フルタイムで働いています。仕事は4時まで終わりません。帰宅後はいつも同じ、料理、洗濯などなど。主人は時々助けてくれますが、いつも怒鳴っている気がします。コントロールできないのです」


*この続きは書籍『イースト・コースト インターネット暮らし』(新風舎)でお楽しみください。

(時事通信社 世界週報連載『熱田千華子のあめりかインターネット暮らし』より)